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京都大学 医生物学研究所 生命システム制御部門
発生システム制御分野

RESEARCH

研究概要

脳や心臓などの器官形成過程は細胞の増殖、分化、移動などを伴う極めて複雑な現象です。器官形成を実現するための原理を理解し、試験管内で機能的な器官形成を再現する為に、私たちの研究室では多能性幹細胞(ES細胞/iPS細胞)を用いてin vitroでの器官形成再現のための技術開発を行なうとともに、その形成過程を解析することで多細胞が協調して機能的な器官を作り上げるメカニズムを明らかにすることを目的として以下の研究テーマに取り組んでいます。


in vitro での機能的組織形成のための幹細胞制御技術の開発

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ES細胞やiPS細胞は全ての種類の体細胞と生殖細胞に分化する能力(多能性)を有しており、これらの多能性幹細胞から立体的な生体組織(オルガノイド)形成技術が近年盛んに研究されてきました。これらの新しい技術は再生医療だけでなく、疾患モデル研究や創薬プラットフォームの分野でも注目されています。本研究室ではこれまでに、発生過程において多細胞体が自己組織化的に複雑なパターンや特徴的な立体形状を獲得する性質を利用して、層構造を持った大脳組織や網膜組織をES/iPS細胞から形成する技術を開発してきました。発生システムを制御し複雑な機能性組織を試験管内形成するための新たな技術開発に取り組むとともに、これらの技術を再生医療や創薬などに応用するための基盤研究も行なっています。


器官形成を実現する多細胞動態原理の解明

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機能的な臓器を形成する過程における多細胞動態は極めて複雑であり、その分子レベルのメカニズムは不明な点が多く残されています。本研究室ではマウス及びヒトES細胞からの立体組織形成技術を用いて、組織のパターン形成、細胞移動、形態形成の力学動態、種特異的な発生時間スケールなどに注目して研究を進めています。また、任意の形状を持ったより複雑な臓器を試験管内で形成するための新たな幹細胞制御技術およびそのための高分子材料の開発も行なっています。


より複雑な臓器を試験管内で形成するための高分子材料の利用

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再生医療の実現やより複雑な臓器を幹細胞から安定的に作成するためには、細胞外環境を制御するための生体適合材料の利用が有効です。私たちはヒトオルガノイド系を用いて、臓器の立体形状やパターン形成のより精密な制御を可能にするための高分子材料の開発もおこなっています。これまでに、光硬化性ハイドロゲルを用いて、細胞に障害を与えることなく安全に、網膜オルガノイドの立体形状を制御できる技術などを開発しています。今後は分泌シグナルや細胞への力学刺激などを局所的に制御できる高分子材料の開発を行いたいと考えています。


ヒトES細胞の特性解析

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ES細胞は、私たちヒトを含むいくつかの哺乳類動物で樹立されていますが、歴史的にはまずマウスES細胞を用いた研究が先行し、細胞特性や多能性維持の分子機構に関する知見、細胞操作技術のノウハウが蓄積してきました。その後、やや遅れてサルやヒトなどのES細胞の研究が発展してきましたが、その結果、霊長類であるサル・ヒトES細胞は、齧歯類であるマウスES細胞とはかなり異なる形質を持つことが分かってきました。このような背景を踏まえ、分子生物学や細胞生物学、発生学からのアプローチに、新しい遺伝子改変技術や細胞操作法、解析手法を取り入れながら、ヒトES細胞の特性解析に取り組んでいます。特に、霊長類のES細胞に特徴的な性質に注目し、その分子的基盤や生物学上の意義について理解を深めることを目指しています。このような研究を通じて、ヒト多能性幹細胞を活用した再生医療や創薬の可能性を拡げるとともに、生物種によって異なる様々な性質がどのように生じるのかを知るヒントを得たいと考えています。


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