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4) ES細胞を用いた発生分化に関する研究

 遺伝子操作では、単一のプロモーターから複数の遺伝子を効率よく発現させたい場合がしばしばあり、そのような目的にIRES (internal ribosome entry site)がよく用いられています。しかしながらES細胞ではIRESが効率よく機能せず、下流側の遺伝子産物の産生効率が非常に悪いことが知られており、これに代わる方法の開発が必要とされてきました。そこで我々は、Foot and mouth disease virus の2A配列に着目しその機能をヒトES細胞で評価しました。その結果IRESを用いた場合には下流側遺伝子の発現は上流側遺伝子の10%以下しか翻訳されないのに対し、2A配列を用いた場合には90%以上の効率で翻訳されていることがわかりました(図)。2A配列は非常に有効であり、未分化ES細胞だけでなく、分化細胞においても効率よく機能することがわかり、本システムはさまざまな目的で利用可能であると考えられます。実際にiPS細胞の作成で大きな問題であったウイルスベクターの使用を回避するためのプラスミドベクター法にも利用されるなどしており、この研究の重要性は広く知られるようになっています。
Hasegawa K, Cowan AB, Nakatsuji N, Suemori H. Efficient multicistronic expression of a transgene in human embryonic stem cells. Stem Cells. 25: 1707-1712 (2007)


2A配列を利用した複数タンパク質の効率的な産生

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Last Update on 2012.6.1