研究内容ー2時間を刻む生物時計

体節形成の項目で記述したように、bHLH因子Hes1は2時間時計の本体であることがわかりました。Hes1の発現はネガティブフィードバックを介して自律的に2時間周期で増減を繰り返します(オシレーション)(図3)。Hes7オシレーションは体節形成過程に特異的ですが、興味あることにHes1オシレーションは神経系や筋肉系といった様々な種類の細胞でみられました(Hirata et al., 2002)。さらに、このHes1オシレーションはStat3-Socs3系のオシレーションにも依存することがわかりました(Yoshiura et al., 2007)。

図3:(左) Hes1 mRNAおよびタンパクの発現量は2時間周期でオシレーションします。タンパクはmRNAより約15分遅れて変動します。

(右) Hes1オシレーションは、プロモーターが活性化されるとネガティブフィードバックを介して自律的におこります。

 

胎児の神経幹細胞においてもHes1の発現はオシレーションしており、さらに下流のプロニューラル遺伝子Neurogenin2やNotchリガンド遺伝子Deltalike1の発現もオシレーションすることがわかりました。この発現オシレーションによって神経幹細胞は相互にNotchシグナルを活性化します(Shimojo et al., 2008)。また、Hes1がオシレーションでなく持続的に発現すると、細胞分化や増殖が阻害されました(Baek et al., 2006)。

図4:神経幹細胞におけるNotchシグナル分子の発現オシレーション (Neuron 4月10日号)

当研究室のテーマ

神経発生

体節形成

2時間を刻む生物時計

成体脳ニューロン新生

・幹細胞分化調節