発表論文


杉田のハーバード時代の主な論文は こちら を参照してください。

杉田研からの発信

Mizutani T, Ohba Y, Mizuta S, Yasuda J, Urata S.
An Antiviral Drug Screening Platform with a FRET Biosensor for Measurement of Arenavirus Z Assembly.

Cell Struct Funct. 45(2):155-163, 2020.

日本語記事はこちら


Morita D, Iwashita C, Mizutani T, Mori N, Mikami B, Sugita M.
Crystal structure of the ternary complex of TCR, MHC class I and lipopeptides.
Int Immunol. 32(12):805-810, 2020.

日本語記事はこちら


Shima Y, Morita D, Mizutani T, Mori N, Mikami B, Sugita M.
Crystal structures of lysophospholipid-bound MHC class I molecules.
J Biol Chem. 295(20):6983-6991, 2020.

日本語記事はこちら


Yamamoto Y, Morita D, Shima Y, Midorikawa A, Mizutani T, Suzuki J, Mori N, Shiina T, Inoko H, Tanaka Y, Mikami B, Sugita M.
Identification and structure of an MHC class I-encoded protein with the potential to present N-myristoylated 4-mer peptides to T cells.

J Immunol. 202(12):3349-3358, 2019.

日本語記事はこちら

Yoshioka Y, Mizutani T, Mizuta S, Miyamoto A, Murata S, Ano T, Ichise H, Morita D, Yamada H, Hoshino Y, Tsuruyama T, Sugita M.
Neutrophils and the S100A9 protein critically regulate granuloma formation.
Blood Advances 1:184-192, 2016.

S100A9タンパク質を高発現する好中球が結核肉芽腫形成の初期に集積し、組織だった肉芽腫の形成にクリティカルな役割を果たしていることを実証し、結核肉芽腫形成の新たなモデルを提唱した。

Kim JH, Hu Y, Yongqing T, Kim J, Hughes VA, Le Nours J, Marquez EA, Purcell AW, Wan Q, Sugita M, Rossjohn J, Winau F.
CD1a on Langerhans cells controls inflammatory skin disease.
Nature Immunology 17(10):1159-66, 2016.

ハーバード大学のWinau博士が主導した研究の成果であり「杉田研からの発信」リストに加えるのはおこがましいが、私たちが樹立したおそらく世界でいま利用可能な唯一のCD1トランスジェニックマウスを活用して、皮膚アレルギーにおけるCD1a分子の役割を実証した研究。皮膚ランゲルハンス細胞のマーカー分子として長らく使用されてきたCD1a分子の生体内における機能が初めて明確になった。

Morita D, Sugita M.
Lipopeptides: a novel antigen repertoire presented by MHC class I molecules. (review)
Immunology 149(2):139-45, 2016.

Immunology誌編集長より依頼があり、総説を寄稿した。ペプチド抗原のpost-translational modificationを検知する免疫認識機構をオーバービューするとともに、私たちが発見したリポペプチド免疫機構の新規性を論述した。

Morita D, Yamamoto Y, Mizutani T, Ishikawa T, Suzuki J, Igarashi T, Mori N, Shiina T, Inoko H, Tanaka Y, Mikami B, Sugita M.
Crystal structure of the N-myristoylated lipopeptide-bound MHC class I complex.
Nature Communications 7:10356, 2016.

HIV/SIV Nefタンパク質は、そのN末端グリシン残基にミリスチン酸の修飾を受けることによりその免疫抑制機能を発揮する。私たちのこれまでの研究から、ミリスチン酸修飾を受けたNefタンパク質N末端断片、すなわちリポペプチドを標的とした細胞傷害性T細胞応答が存在することが分かっていたが、その分子機序は不明であった。本研究において、MHCクラス1分子がその機能を担うことを示し、MHCクラス1:リポペプチド複合体のX線結晶構造解析から、その特徴的な結合様式を明らかにした。本研究で得られた成果は、MHCクラス1分子はペプチド抗原提示を担うという旧来の固定概念を覆すものであり、免疫学の新たなパラダイムの発見である。



Hattori Y, Morita D, Fujiwara N, Mori D, Nakamura T, Harashima H, Yamasaki S, Sugita M.
Glycerol monomycolate is a novel ligand for the human, but not mouse macrophage inducible C-type lectin, Mincle.

J. Biol. Chem. 289(22): 15405-15412, 2014.

休眠結核菌のマーカー脂質と考えられるミコール酸脂質(グリセロールモノミコール酸)に対する自然免疫受容体としてヒトMincleを同定した。興味深いことにマウスMincleはグリセロールモノミコール酸を認識しない。ヒトMincleを発現したトランスジェニックマウスにグリセロールモノミコール酸を接種すると、好酸球の浸潤を主体とした組織応答が誘起されることを見出した。ヒトとマウスの結核病理の違いを説明する機構として注目される。

 

Morita D, Miyamoto A, Hattori Y, Komori T, Nakamura T, Igarashi T, Harashima H, Sugita M.
Th1-skewed tissue responses to a mycolyl glycolipid in mycobacteria-infected rhesus macaques.

Biochem. Biophys. Res. Commun. 441(1): 108-113, 2013.

増殖結核菌のマーカー脂質であるミコール酸糖脂質(グルコースモノミコール酸)に対する組織応答をアカゲザルを用いて詳細に解析した。グルコースモノミコール酸接種組織において、TH1型T細胞をリクルートするケモカインが産生され、結核防御に有効なTH1型T細胞応答が誘起される。一方、TH2応答やTH17応答は不変あるいは抑制された。したがって、宿主獲得免疫系は、増殖結核菌が宿主グルコースを基質として産生するグルコースモノミコール酸を標的(目印)として、感染防御応答を誘起すると考えられる。

 

Morita D, Hattori Y, Nakamura T, Igarashi T, Harashima H, Sugita M.
Major T cell response to a mycolyl glycolipid is mediated by CD1c molecules in rhesus macaque monkeys.

Infect. Immun. 81(1): 311-316, 2013.

アカゲザル結核モデルを確立し、増殖結核菌が産生するミコール酸糖脂質(グルコースモノミコール酸)に対するT細胞応答を実証するとともに、それがCD1c分子によって制御されていることを示した。このグルコースモノミコール酸特異的T細胞は、メモリータイプのTH1型サイトカイン産生細胞であり、結核菌感染組織にリクルートされる。したがって、グルコースモノミコール酸が新たな抗結核脂質ワクチンとして機能する可能性が高まった。

 

Morita D, Yamamoto Y, Suzuki J, Mori N, Igarashi T, Sugita M.
Molecular requirements for T cell recognition of N-myristoylated peptides derived from the simian immunodeficiency virus Nef protein.

J. Virol. 87(1): 482-488, 2013.

サルエイズウイルスNefタンパク質由来のリポペプチドおよびその変異分子を作製し、T細胞応答に必須の抗原構造を決定した。ミリスチン酸付加シグナルのクリティカルコンポーネントである1番目のミリスチル化グリシンと5番目のセリンがアンカーとして機能し、中央の3アミノ酸残基とりわけ2番目と4番目のアミノ酸残基がT細胞エピトープを構成することを示した。これらの情報をもとに、リポペプチド抗原提示分子の基本モデルを構築し、提唱した。

 

Matsunaga I, Komori T, Mori N, Sugita M.
Identification of a novel tetrapeptide structure of the M. avium glycopeptidolipid that functions as a specific target for the host antibody response.

Biochem. Biophys. Res. Commun. 419(4): 687-691, 2012.

M. avium complex (MAC)が産生するグリコペプチドリピドの詳細な構造解析から、旧来しられていたペプチド骨格とは異なる新しいペプチド骨格を有する分子種を同定した。さらにMAC感染個体において、この新しいペプチド骨格を有するグリコペプチドリピドを標的にした抗体応答が強く誘起されることを見いだした。


Matsunaga I, Sugita M.
Mycoketide: a CD1c-presented antigen with important implications in mycobacterial infection. (review)

Clin. Dev. Immunol. 2012:981821, 2012.

ヒトCD1c分子によって提示される結核菌抗原・マイコケチドについて、その生合成経路やCD1c分子との結合様式、T細胞応答の特質ならびに病態への関与を包括的かつ詳細に論じたテキストブック的総説である。


Kobayashi C, Shiina T, Tokioka A, Hattori Y, Komori T, Kobayashi-Miura M, Takizawa T, Takahara K, Inaba K, Inoko H, Takeya M, Dranoff G, Sugita M.
GM-CSF-independent CD1a expression in epidermal Langerhans cells: evidence from human CD1A genome-transgenic mice.

J. Invest. Dermatol. 132(1): 241-244, 2012.

クローン化したヒトCD1Aゲノム遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製したところ、本来のCD1a分子の発現場所である表皮ランゲルハンス細胞および胸腺T細胞にCD1a分子の発現が認められた。in vitroではGM-CSFが最も強力なCD1a分子発現誘導因子であることから、生体内においてもGM-CSFが重要な役割を果たしていることが想定されたが、GM-CSFノックアウトマウスとの交配結果から、生体内はGM-CSF非依存的な経路によりCD1aの恒常発現が維持されていることが明らかとなった。


Morita D, Igarashi T, Horiike M, Mori N, Sugita M.
Cutting edge: T cells monitor N-myristoylation of the Nef protein in SIV-infected monkeys.
J. Immunol. 187(2): 608-612, 2011.

エイズウイルスが産生するNef蛋白質は、そのN末端グリシン残基にミリスチン酸(C14直鎖脂肪酸)が付加されることにより膜にアンカーし、宿主免疫分子の発現を抑制する。本研究は、エイズウイルスにとって重要なエスケープ戦略であるこのミリスチン酸付加反応を宿主キラーT細胞が検知し、これを標的としたウイルス防御応答を誘起することを示すとともに、リポペプチドが蛋白質、脂質とは別個の第3の抗原レパートリーとなることを実証した。


Hattori Y, Matsunaga I, Komori T, Urakawa T, Nakamura T, Fujiwara N, Hiromatu K, Harashima H, Sugita M.
Glycerol monomycolate, a latent tuberculosis-associated mycobacterial lipid, induces eosinophilic hypersensitivity responses in guinea pigs.

Biochem. Biophys. Res. Commun. 409(2): 304-307, 2011.

結核休眠菌が産生すると想定されている細胞壁脂質(グリセロールモノミコール酸)に対する生体応答は、好酸球浸潤を伴ったTH2サイトカイン優位な応答であることを明らかにした。このことは、休眠菌によるグリセロールモノミコール酸の産生が、宿主防御応答を抑制するためのストラテジーである可能性を示唆する。


Komori T, Nakamura T, Matsunaga I, Morita D, Hattori Y, Kuwata H, Fujiwara N, Hiromatu K, Harashima H, Sugita M.
A microbial glycolipid functions as a new class of target antigen for delayed-type hypersensitivity.

J. Biol. Chem. 286(19): 16800-16806, 2011.

モルモットモデルを活用し、遅延型アレルギー応答を惹起する新たなchemical classの抗原として、結核菌由来の糖脂質分子グルコースモノミコール酸を同定した。この反応は、結核防御に重要なTH1サイトカイン応答に極度にシフトしたものであり、グルコースモノミコール酸の抗結核ワクチンとしてのポテンシャルを示すものである。またこの遅延型アレルギー応答は、原因不明の皮膚アレルギーや肉芽腫症の基盤となる可能性がある。


Matsunaga I, Sugita M.
New insights into lipidic secondary metabolism in Mycobacteria. (review)
Curr. Chem. Biol. 5(1): 52-63, 2011.

抗酸菌細胞壁表層に存在する糖脂質群を二次代謝産物としてとらえ、その構造や生合成経路、生物学的作用を論じた。この着眼は、宿主細胞内寄生細菌としての抗酸菌の特質や病原性の理解、さらには新たな脂質ワクチンの開発において重要である。


Nakao H, Matsunaga I, Morita D, Aboshi T, Harada T, Nakagawa Y, Mori N, Sugita M.
Mycolyltransferase from Mycobacterium leprae excludes mycolate-containing glycolipid substrates.

J. Biochem. 146(5): 659-665, 2009.

らい菌は、人工培地では生育せず、宿主生体内においてのみ増殖が可能である。らい菌は、多くの人工培養抗酸菌が多量に産生するトレハロースジミコール酸(TDM)をほとんど産生しないことがこれまでの研究から示唆されていたが、その分子機序は不明であった。本研究において、らい菌由来のミコール酸転移酵素Ag85Aをコードする遺伝子をクローニングし、リコンビナントタンパク質を精製してその機能解析を行った。その結果、らい菌由来Ag85Aは、結核菌や非結核性抗酸菌由来のAg85Aと異なり、ミコール酸基質の結合部位にアミノ酸変異が存在するため、ミコール酸転移酵素としての機能を欠如していることが示された。


Otsuka A, Matsunaga I, Komori T, Tomita K, Toda Y, Manabe T, Miyachi Y, Sugita M.
Trehalose dimycolate elicits eosinophilic skin hypersensitivity in mycobacteria-infected guinea pigs.

J. Immunol. 181(12): 8528-8533, 2008.

抗酸菌感染個体において、トレハロースジミコール酸(TDM)を標的とした過敏応答が成立することを見出した。この生体反応は、ツベルクリン反応に代表されるタンパク質を標的としたTH1優位の遅延型過敏応答とは異なり、好酸球浸潤を主体としたTH2優位の応答であり、これまでにない新しいタイプの過敏応答であることが判った。結核菌感染局所には、好酸球の浸潤が見られることはこれまでにも知られていたが、その機序は不明であった。本研究はこの機序を明らかにするとともに、結核防御免疫に関わる新しい免疫経路を実証したものとして注目される。


Morita D, Katoh K, Harada T, Nakagawa Y, Miura T, Matsunaga I, Adachi A, Igarashi T, Sugita M.
Trans-species activation of human T cells by rhesus macaque CD1b molecules.
Biochem. Biophys. Res. Commun. 377(3): 889-893, 2008.

サルはヒト感染症のモデル動物として注目されているが、CD1依存性脂質免疫応答システムの詳細は不明であった。本研究では、サルグループ1CD1遺伝子(CD1A、CD1B、CD1C cDNA)を単離し、その配列を決定するとともに、遺伝子産物の発現と機能の解析を行った。その結果、サルグループ1CD1システムは、多くの重要な点でヒトと酷似していることが明らかとなった。さらに、サルCD1b分子は、ヒトT細胞への抗原提示が可能であることが示され、種を越えたグループ1CD1機能が初めて実証された。


Matsunaga I, Komori T, Ochi A, Mori N, Sugita M.
Identification of antibody responses to the serotype non-specific molecular species of glycopeptidolipids in Mycobacterium avium infection.

Biochem. Biophys. Res. Commun. 377(1): 165-169, 2008.

M.aviumの血清型を決定する糖鎖エピトープを欠如したグリコペプチドリピド(血清型非特異的グリコペプチドリピド)は、液性免疫の標的とはならないと考えられてきた。しかし本研究において、この分子種に対する抗体応答を初めて見出し、そのエピトープを明らかにした。血清型非特異的グリコペプチドリピドは、すべての血清型のM.aviumに存在するが結核菌やBCGには存在しないことから、これに対する抗体の実証は、臨床的に重要なM.avium感染症と結核の鑑別診断に有用であることが示唆された。


Matsunaga I, Naka T, Talekar RS, McConnell MJ, Katoh K, Nakao H, Otsuka A, Behar SM, Yano I, Moody DB, Sugita M.
Mycolyltransferase-mediated glycolipid exchange in Mycobacteria.
J. Biol. Chem. 283(43): 28835-28841, 2008.

標準液体培地で培養した抗酸菌は、高い自然免疫刺激活性を有する細胞壁糖脂質トレハロースジミコール酸(TDM)を産生する。一方、宿主に感染した抗酸菌は、自然免疫系からのエスケープを可能にするため、TDM産生を抑制するのではないかと考え、研究を展開した。本論文では、抗酸菌が宿主由来のグルコースを活用し、TDMを自然免疫刺激活性の弱いグルコースモノミコール酸(GMM)に置換することを発見し、その反応を担う酵素としてAg85Aを同定した。興味深いことに、宿主自然免疫系からのエスケープのために産生されたGMMは、CD1b依存性獲得免疫機構の標的となり、宿主に新たな感染防御機構を提供する結果となっている。これは、宿主免疫系と抗酸菌が相互のインターアクションにより、互いを磨いてきたことを物語っている。


Matsumoto Y, Yuki N, Van Kaer L, Furukawa K, Hirata K, Sugita M.
Cutting edge: Guillain-Barre syndrome-associated IgG responses to gangliosides are generated independently of CD1 function in mice.

J. Immunol. 180(1): 39-43, 2008.

C.jejuni菌の感染により、菌が産生するlipo-oligosaccharide(LOS)に対する抗体が産生され、これが神経細胞のガングリオシドと交差反応性を示すことがギランバレー症候群発症の一因とされる。この自己交差性抗体の産生にはCD1d分子を介したNKT細胞の活性化が関与する可能性が想定されてきた。しかし、モデルマウスおよびCD1dノックアウトマウスを用いた本研究により、CD1d非依存性免疫経路の存在が実証された。