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会社方針研究室について

研究内容

三浦研究室では「病原体の解明と予防・治療法の開発」を目標に研究を行っています。

免疫不全ウイルス(HIV-1、SIV、SHIV)

 抗HIVワクチンの開発や、より効果的なエイズ治療法確立のため感染状態を実験的に作り出して研究する必要があります。
そのために我々は(1)エイズ動物モデルの確立、現行のモデルの改良 を行っています。また、このようにして作った動物モデルを用いて、 (2)抗HIV薬治療下の潜伏ウイルスの探索(3)HIV感染におけるマクロファージ(大食細胞)の意義 について研究しています。以下に各々の研究について簡単に説明します。

  • (1)エイズ動物モデルの確立、現行のモデルの改良

今から20年前、HIVとサルの相同ウイルスSIVの遺伝子を組み合わせたSHIVが世界に先駆けてこの研究室で作られました。現在、SHIVはエイズ動物モデルとして世界的に広く用いられています。しかし、科学の進歩に伴い、かつて良いと思われたものにも欠点が見えてきました。我々は現在、世界で最も蔓延しているタイプのHIVを用いたSHIVを作る事、また、HIVとSIVの遺伝子を組換える場所を変えたり、持ち寄る遺伝子を変える事で、よりヒトのHIV感染を良く再現するウイルスを作り出そうとしています。 (参考:Fujita, et al., 2013, Virol.)

  • (2)抗HIV薬治療下の潜伏ウイルスの探索

現在、30種類以上の抗HIV薬があり、これらの幾つかを組み合わせて服用すれば、ウイルスは見かけ上消え、エイズの進行を止める事が出来ます。しかし、一端服薬を止めるとウイルスはすぐに増えてきます。つまり、抗ウイルス薬は我々の体から完全にウイルスを追い出す事が出来ません。ウイルスは我々の体のどこに、どのようにして隠れているのか動物モデルを使って研究しています。薬を止めると増えて来るウイルスはリンパ節に多く潜んでいるらしい事が最近の我々の研究から分かってきました。現在、更に感度の高い方法で治療中にウイルスがどこでどうやって生き延びているか調べています。 (参考:Oue, et al., 2013, J Virol.) (参考:Horike, et al., 2011, Virol.)

  • (3)HIV感染におけるマクロファージ(大食細胞)の意義

HIVに感染すると体中のリンパ球の一種(CD4陽性T細胞と言います)が減少してゆきます。この細胞がウイルスに感染して死んでゆくためと考えられています。HIVは発見された当初からこのCD4陽性Tリンパ球に加え、マクロファージと言う別の免疫細胞でも増える事が知られてきました。しかし、マクロファージ感染がエイズと言う疾患にとってどのような意味があるか良く分かっていません。体の中でウイルス感染細胞の圧倒的大多数はリンパ球であり、感染マクロファージはごく少数であり、研究しにくいのが理由のひとつです。SHIVの中には感染後数週間で体中のCD4陽性Tリンパ球をほぼ完全に枯渇させ、その後マクロファージで増え続ける高病原性SHIVと言うウイルスがあります。このウイルスの感染後期はほぼ完全にマクロファージが感染細胞になっています。これを利用してウイルス感染におけるマクロファージの意義を研究しています。まず、感染マクロファージは長生きするのではないかと言われていますが、それは本当かをこのシステムに抗ウイルス剤投与を組み合わせて検討しています。


新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)

 新型コロナウイルスの感染の広がり方はヨーロッパ・アメリカの方がアジア諸国よりも急速で、死者数が多いことがわかっています。このような感染拡大の違いにBCGワクチンを接種している地域であるかどうかが関係しているとする説がありますが、根拠はBCG接種と新型コロナウイルスの広がり方の相関性だけで実証性に欠けています。私たちはこの仮説が正しいかどうかを霊長類モデルにより検証したいと考えています。
 また私たちは京都茶業研究所と、宇治茶に含まれる成分の新型コロナウイルス感染抑制効果について共同研究を行っています。




研究設備

三浦研究室が所有する設備の他、ウイルス・再生医科学研究所の共同設備を利用することができます。ここではその一例を紹介します。

P3実験室(三浦研究室所有)

 HIV-1等のBSL3(バイオセーフティレベル3)の病原体を扱える実験室です。
 実験室内は常に陰圧がかかっており室外から室内へ向かう気流になっています。さらに、バイオハザード対策用の安全キャビネット内でウイルスを取り扱うため病原体を物理的に隔離することができます。また実験室には前室が設けられ、廊下(外部)と実験室(内部)の扉が同時に開かないよう電子制御されています。そして実験室からの排気はHEPAフィルターを通して安全な状態にしたうえで放出されています。実験で使用した廃棄物はオートクレーブで滅菌処理をしてから室外へ持ち出します。
 P3実験室の中には、ウイルスの中和試験や感染力価測定に欠かせない「プレートリーダー」、血液サンプルを少量取り込むだけで測定できる「自動血球分析装置」、「遠心機」、ウイルスや細胞を培養する「CO2インキュベーター」、「顕微鏡」等があります。


  

サーマルサイクラー(三浦研究室所有)

 PCR検査をするための機械です。微量なDNAを増幅し検出できるようにします。


液体窒素保存庫(三浦研究室所有)

 作製したウイルスや細胞等は、-196℃の液体窒素に浸して長期保存しています。


シークエンサー(共通機器)

DNAから遺伝子情報を解読する機械です。三浦研究室ではウイルスの遺伝子解析を行うことで、系統樹の作製やウイルスの性質や特性をつかさどる遺伝子情報を読み解く研究等を行っています。


超遠心機(共通機器)

遠心機の中を真空にすることで、一般的な遠心機よりも高速で遠心することができます。超高速回転をすることにより、細胞で増殖させたウイルスを精製・回収することができます。


セルソーター(共通機器)

フローサイトメトリーを行う時に使います。例えばHIV-1が細胞に侵入するときに用いるCD4を蛍光標識することでCD4を発現した細胞の割合を測定することができます。複数の要素を組み合わせて蛍光標識することで目的とする細胞を狙うことができます。


電子顕微鏡(医学研究科電子顕微鏡室)

ウイルスの撮影をすることができます。


共焦点蛍光顕微鏡(共通機器)

蛍光標識された細胞内の構造やウイルスを観察することができる顕微鏡です。三浦研では、臓器や細胞内でのウイルスの分布の調査に使用しています。