[HIV(ヒト免疫不全ウイルス)]
HIVは免疫応答の維持に必須のCD4陽性T細胞を主要な標的細胞として感染し、後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすウイルスです。HIV感染後、急性期、潜伏期などを経て、AIDSを発症すると、CD4陽性T細胞はゆっくりと減少し、その数が血中で200/μl以下になると種々の日和見疾患が起こります。
HIV感染によってCD4細胞が破壊されるメカニズムは、いくつか考えられており(下図参照)、HIVの感染と増殖による直接の細胞破壊(下図①、③)、HIV抗原を認識するCD8陽性細胞障害性T細胞による感染細胞の破壊による宿主自らの免疫系のネットワークの崩壊(下図②)、そして、リンパ節等において感染細胞周辺の細胞が細胞死を起こしている事(bystander cell death)(下図④)などが考えられています。実際に生体内で破壊されるCD4細胞のほとんどが非感染細胞であることから、bystander cell deathによるCD4細胞死誘導の重要性が伺えます。
当研究室では、HIVの増殖性や病原性を規定するウイルス因子の解析を行っていて、現在ではbystander cell deathに関わるウイルス因子とそのメカニズムに注目して研究を行っています。